
「オススメ度」★★★★★
2001年カンヌ国際映画祭「グランプリ」「最優秀主演女優賞」「最優秀主演男優賞」3部門を受賞した「ピアニスト」。
評判は耳にしていましたが、今回初めてTV放送で鑑賞しました。
まぎれもない愛の物語はせつなく、そしてグロテスク。
ストーリー
エリカは幼い頃からピアニストになるために厳しい母に教育を受け、恋人をつくることも一度も許されない抑圧された環境で育った。しかし、母の夢だったコンサートピアニストになれず、現在は名門ウィーン国立音楽院のピアノ科の教授になったことで、自分を責めている。エリカが中年となった今も、母は彼女を監視し重苦しい雰囲気の中で暮らしが続いていた。
そんな時、小さなコンサートで彼女の演奏を聞いた美しい青年ワルターは、彼女に恋をする。
若々しく、まっすぐにあふれんばかりの愛を口にするワルターに、始めのうちエリカも戸惑い、逃げ腰になるが、いつしか彼女もヴァルターの姿を追いかけるようになる。
そして、彼女はヴァルターに誰にも語ったことのない秘密をうち明けることを決意する…。
心も、体も「痛い」。
最も簡潔にこの映画の感想をいうなれば、こうしか言えません。
ラストシーンに次いで、エンドロールに入った途端、思わず呻いてしまった。
何がすごいって、リアリティがすごい。
エリカの性癖に対する異常性を取り上げる感想も多いようですが、私は誰しもが抑圧されている現代社会において、エリカは決して特異な存在では無いと思います。
もちろん映画ですから、誇張されていると割り引いても、女ならきっと、エリカを見て、自分を見ることもあるのでは?
ワルターから愛をぶつけられても、幼い頃から母以外の人間と接触することの無かったエリカは、どういう風に彼に答えていいのかわからない。
彼女の愛や、セックスについての知識は、AVや猥褻な本で読んだものばかりで、極端なまでに歪められています。彼女の体内で長年蓄積されたそれらはどす黒く、ヘドロのように腐っている。
そんな彼女が初めて男性に心開いたとき、それは彼にとって受け入れられるものではなかったのでしょう。
純粋な恋心にいきなり汚泥を塗りつけられたように感じるワルターは、憤りと愛しさのに絶えかねて極端な行動に出てしまう。
でも、彼は若い。
「愛に幻滅したからと言って、悲しむ必要はないよ」
ワルターは難なく日常に戻っていく。
取り残されたエリカは、また、ひとり・・・・・。
心の奥底から愛を求めているのに、その表現の仕方がわからず、他に方法もなく、自分をさらけ出したとき、愛しい人は離れていく、その恐怖。
どうして、どうして。
そんな叫びは、私の心を抉り、大きな足跡を残すのに充分な映画でした。
それにしても、そんな愛の表現方法しか知らないエリカが弾くバッハやショパンのピアノ曲は、どうしようも無く美しい。
特にミニコンサートでのバッハはハ短調協奏曲。
ワルターもこれで惚れたが、佐姫子も惚れた。
人を愛することの出来ない彼女の指先がこんな音楽を紡ぐとは。
そのギャップに、ますますせつなくなってしまうのです。
最後に。
ワルター役ブノア・マジメルにきゅんっ!
「王は踊る」「悪の華」などで、なんだか印象に残る俳優ではあったけど、うーん、かっこいい・・・とは違うなあ、と思っていたのです。
「ピアニスト」では、文句無くすんばらしい。
8頭身の締まったスレンダーな体、少年のようにすねた唇と、大人の色気漂うせつなげな表情。
トイレに籠もったエリカを無理やり引っ張り出して抱きしめるあの有名なシーン、いいわ、いいわ。
そんな彼は、ジュリエット・ビノシュの一まわり年下の旦那様。
色っぽい夫婦ですねえ。











